mary開講 寶塚萬歲

目を潤ませてファンへ感謝のメッセージを送った宝塚歌劇星組トップスター・柚希礼音

　来年５月１０日付での退団が発表された宝塚歌劇星組トップスター・柚希礼音が２０日、大阪市内で会見に臨み、「いっぱい、いただいた愛を、何倍もお返ししたい」と目を涙で潤ませ、ファンに感謝した。トップ退団会見で、男役が涙を浮かべるのは異例。６年１３日と近年では異例の“長期政権”となった“トップ・オブ・トップ”は「あっという間だった。１２０％頑張りました」と、さわやかに振り返った。

　「みなさま、ほんっとうに…本当に…」左手を胸に当て、感謝の思いを込めた言葉が詰まった。会見が始まって１３分。宝塚歌劇専門チャンネル「スカイステージ」が、会見中にファンへのメッセージを求め、カメラに語りかけると自然に目が涙でにじみ始めた。「宝塚１００周年を支えてくれた、誰もが認める大スター」（小林公一理事長）が、素顔の「ちえちゃん」に戻った瞬間だ。

　トップスター退団会見では２００１年１２月、腰のけがを隠して花組・匠ひびきがトップ就任即卒業を発表した際に“悔し涙”を見せたが、元来ダンディズムを追求する男役だけに、関係者によると「涙は近年では珍しい」。入団から１６年、柚希がファンから注がれた愛の大きさを物語る“男泣き”だ。

　近年では宙組元トップ・和央ようかの６年５５日に匹敵する、６年１３日の異例長期トップ歴。「くじけそうになった時もありましたが、今振り返ればあっという間。自分の中では１２０％頑張りました」。退団の決断は、記念イヤーの今年に入ってから。「微力ながらも盛り上げたいと思っていた１００周年を迎え、そろそろかな…」と説明した。

　星組メンバーには宝塚大劇場千秋楽の１８日に退団を告げた。コンビを組む娘役トップ・夢咲ねねには、その数日前に伝え、「ありがとう」と言葉をかけたという。思い出には「失敗できないと思って臨んだ」昨年の宝塚初の台湾公演を挙げた。

　退団後については「私が女性っていうのも、ちょっとどうかと（笑い）。日々考えながら、もう一生できない男役をまっとうしたい」。寿退団の可能性についての質問には「聞いていただいてありがとう。…ないです」と大阪人らしく“タメ”を作って笑わせた。その卓越したダンスと表現力を生かし、レビュー界で活動を続けるとみられる。

　１１月２２、２３日には元花組トップ・真矢みき以来１６年ぶりの日本武道館公演が控え「身が引き締まり過ぎる思い」。来年３月には大阪・東京で自身初のディナーショーも開催。「まだまだ見たことのない柚希礼音をお見せしたい」と前を向いた。

　◆柚希　礼音（ゆずき・れおん）６月１１日生まれ。大阪市出身。１９９９年４月「ノバ・ボサ・ノバ」で初舞台。星組配属。０３年「おーい春風さん」でバウホール初主演。同年の「王家に捧ぐ歌」から５作連続で新人公演主演。０９年４月に星組トップスターに就任。「黒豹（くろひょう）の如（ごと）く」「Ｄｅａｒ　ＤＩＡＭＯＮＤ！―１０１カラットの永遠の輝き―」（兵庫・宝塚大劇場＝来年２月６日～３月９日、東京宝塚劇場＝同３月２７日～５月１０日）をもって退団する。身長１７２センチ。愛称「ちえ」。